夢を見たんだ。
あの日……ナーヴ教会で、リーベルが死んだ日の夢だ。あの日、俺はアルムに、呪いを解いてリーベルとともに永遠に生きるかと聞いた。リーベル自身はアルムの呪いを知ってなお、ともに生きようとしていたからな。あいつらは、俺のようにはならないかもしれない。そう思ったんだ。
だが、アルムは俺の手を取らなかった。リーベルの死を受け入れ、人としての有限の命を生きると決めた。
それはそれでいい。あいつ、ちゃんと笑っているからな。
だが……、夢の中で、アルムは永遠を選んだ。
解呪には成功したよ。これで失敗したら笑ってしまうが。そのあとだ。
夢の中で、俺の身体は崩れはじめた。
そうだ。リーベルとアルムが死を失うかわりに、俺に死が返ってきたんだ。
さすがは夢だな。都合がいい。
死ぬんだと思ったよ。ようやく死ねるのだと。それでな……。
笑ってしまうよ。
俺は、死ぬのが怖くなった。
後悔したんだ。
まだ、おまえに何も伝えていない。謝ってない。礼も言ってない。なにも、なにも……。
つくづく、馬鹿だなと思ったよ。こんなに長く生きてきたのにな。おまえと離ればなれに朽ちるとなったら、慌てるのかと……。
それから――夢とは都合のいいものだよな。おまえとコノエが見えたよ。おまえたちの身体も崩れはじめていた。
笑ってたよ。
……まったく。
俺が言いそうなことはわかってる、って、おまえは笑ってた。あれだけ時間があったから、って。最後まで笑ったまま、俺のいないところで死んでいった。
それで、な……、俺は、非常に腹を立てた、というわけだ。
おまえに伝えないままでいた自分にも、分かった風な顔をするおまえにも。
だから、
「だから、伝えに来た。……遅くなって悪かったな」
長い語りを終え、決まり悪そうに視線を逸らす友人に、クオンはふわりと笑ってみせる。
「カバネって前置きが長いよね。話をしよう、と言ってくれれば、それでいいのに。――うん、カバネ。聞かせて。僕の知っていることも、僕の知らないことも……。僕も、言いたいことがたくさんある。あとでコノエも呼ぼうよ。お茶を入れて、おやつを出して、たくさん話そう。なにしろ」
――時間は、たっぷりあるのだから。