【R18】ただいまを言う、少し前。 - 4/5

「…………キース、さぁん……」
 身体のいちばん奥から来る疼きは、あっという間に全身に広がって、再びイワンの身体を燃え立たせた。
 荒い息をつきながら、もじもじと膝をすり合わせたイワンに、わかっているよというように笑いかけたキースが、膝をついて身体を寄せるとキスを深いものに変える。舌先が触れあったとたんに痺れるような快感が背筋を走り、イワンはくぐもった声を漏らした。
 自分からも寄り添って、両腕をキースの太い首に絡める。ぴたりと触れあった裸の胸が互いの鼓動と体温の高さを伝えた。キースさんも興奮してくれている、なんて、さっき最もあからさまな証を見せられたばかりなのに、それでもやっぱり確かめて安心する自分がいた。
 はるか高く見上げるばかりと思っていた憧れのヒーローの腕の中にいることが、いまでもイワンにはときどき信じられない。長い長い夢の中にいるのではないかとすら思う。それでも、夢なのだとしたら夢のままでも、キースの気持ちを疑うことがキースをどれだけ傷つけるかイワンはもう知っているから、過ぎる幸福から逃げ出す代わりにありったけの力でキースにしがみつく。怯える心を押さえつけて、誘われるままキースの口の奥まで舌を滑り込ませ、きつく吸いあげられる快感を素直に甘い声にかえた。
「……きみは、ほんとうにかわいいよ、そしてほんとうに、セクシーだ」
 少しだけ唇を離して、キースは感に堪えないという面持ちで囁く。
「恥ずかしがりやのきみが、私にだけこんな淫らな姿を見せてくれることに、私がどれほど感動しているか……言葉ではとても言いつくせそうにないな」
「やぁ……だって……」
「だって?」
 笑み含みに問い返されて、
「だって、キースさんが……キースさんが、そういう風に、した、から」
 唇を尖らせて、責めるように言いつのれば、キースの空色の瞳が嬉しげに細められた。
「ああ……」
 太い指が首筋を撫で、鎖骨を辿る。優しい、けれども明らかに性的な触れかたに、イワンはびくびくと身体を震わせた。
「そうだね、きみの肌がこんなに敏感なのも――」
 ゆっくりと降りてきた手がイワンの胸に触れ、赤い尖りをつんとつつく。
「あ、やっ……」
「ここをいじって感じるのも――」
 さらに下へもぐりこんだ手が脇腹を通り、背骨から尾てい骨を辿って、狭い入口のそばまで。
 いつもキースの大きなものを受け入れているそこは、まだ慣らしもしていないのに、ひくひくと収縮して訪れを待っている。キースの手で触れられることでよりいっそう実感できてしまう、己の身体のはしたなさに、イワンは首まで真っ赤になって声にならない声をあげて啼いた。
「この場所を男のペニスで突かれて、気持ちよくなってしまうのも」
「あ、ああぁ……っ」
「そしてそれを隠さずに見せてくれるのも。ぜんぶ、私が教えたことだ」
 やわやわと尻たぶを刺激しながら耳元で囁かれて、イワンはキースの首にかじりついたままこくこくと必死に頷いた。
 数え切れないほど夜を重ねて、それでもキースに乱れた姿を晒すのは恥ずかしくてたまらない。けれど、感じる姿を見られること、淫らな言葉を口にすることで、さらなる快感の大波にさらわれていく、その気持ちよさも、イワンはもう知ってしまった。そして、快感を隠さない自分の姿が、キースをひどく煽るということも。
 だから、キースの要求を言いわけにして、そうしてと言われたから応えているのだというふりをして、イワンは自分を解放する。甘くとろけた声をあげ、請われるままに娼婦のように淫らな言葉を口にして、キースと自分の興奮をどこまでも高めていく。
「キースさんの……キースさん、の、せいだもん、僕、」
「うん、そうだね、きみがこんなにいやらしい子なのは、私のせいだ」
「やぁ……言わないでぇ…」
 言葉とは裏腹に、がくがくと腰を揺らして、イワンはすっかり硬度を取り戻した己をキースの腹にすりつける。
「さあ、イワン。言ってごらん、どうしてほしい……?」
 低く、吐息を混じらせた、雄そのものの声で、キースがゆっくりと問いかけた。
「あぁ……いれて、いれて欲しいです……、キースさん、の、キースさんのを、…僕のナカ、に」
「私の、なに?」
「やぁん……!」
 ふるふると首を振り、わかっているくせにと濡れた瞳で睨めば、意地悪な光をたたえたスカイブルーが見つめ返してくる。ひゅっと息をのんで、イワンは理性の最後のひとかけらを手放した。
「これぇ……、キースさんの、これ、ああ、ああっ」
 泣きながらかみつくようにキースにくちづけ、蜂蜜色の髪をかき乱し、自分の言葉に際限なく興奮をあおられながら、イワンはキースさん、キースさんと恋しい相手の名を呼んだ。
「キースさんの、あぁ、キースさんのペニスが欲しいの、キースさんのおおきいので犯して、僕の、おしり、いっぱい突いてぇっ……!」
「イワン、ああ、イワン……っ」
 がぶりと首筋に噛みつかれてイワンは悲鳴をあげる。キースが今まで見せていた余裕を振り捨てた、性急な動きでイワンの身体を反転させると、イワンの秘所にぐいと右手の指をめり込ませた。最後のセックスから日数がたち、しかも潤滑剤を使わない状況で、かたく閉じているはずのそこはけれども痛み以上の快楽をイワンに伝え、キースの指を呑みこもうと収縮を繰り返す。ずぶずぶと埋め込まれていく指の形がはっきりわかった。
 言いようのない幸福感と、欲しいのはこんなものではないという飢餓感と、ふたつが同時にイワンを襲って、イワンはめちゃくちゃに壁をひっかいた。
「キースさんっ……キースさん、ああ、ああ……もっと、ねえ、もっと……!」
「だめ、だよ……きみを、傷つけたく、ないんだ」
 応えるキースの息の荒さと、傷つけたくないと言いながらもいつもより乱暴な指の動きが、彼の高ぶりを伝えてきて、イワンはぞくぞくと身体を震わせた。欲しがられている、このひとが僕をこんなにも求めている、そのことがなにより嬉しい。
 どれだけ痛くてもいいから今すぐキースの硬いものをつきこまれて、獣のようにめちゃくちゃに犯されてしまいたかった。でもそういうセックスを悲しむのがキースのほうだと知っているから、イワンはただキースの指に身体を委ねて、気を失いそうな快感に耐えた。
 いつのまにか三本に増えた指が、ばらばらにイワンの中を暴れまわる。感じる場所を無遠慮にえぐられて、イワンの立ちあがったものは涙のような先走りをひっきりなしにこぼした。やがて、すっかり解れた入口から指がずるりと引き抜かれる。ああっ、と啼いたイワンの背に吸いついて赤い花びらを散らすと、キースはイワンの腰をしっかりと支え、がちがちに猛った己をはくはくと収縮してキースを求めるそこにあてがった。
「……いいね、…挿れるよ」
「ふぁ、ん、…はやく、来てぇっ……」
「…っ!」
 キースの押し殺した呻きの、一瞬ののち。
 ずぶり、
 待ち焦がれたキースのものが、熱く熟れたイワンの身体を押し開き、ひといきに根元まで深く入ってきた。
「あ、あ、あああああああぁぁ――っ!」
 長く尾を引く悲鳴をあげて、イワンは背を弓なりに反らせた。一度達してからは触れられていない性器がびくびくと震えて、白濁を散らす。
「あ、あ、あ、イッちゃ……」
「ああ……挿れただけで、イってしまったね」
「…………ご、めん、なさっ……」
 涙声で謝れば、この上なく優しい声が背中から降ってきた。
「どうして謝るんだい?」
「だ、だって、一緒に、イキた……あ、や、だめ、だめ、まだぁ」
「まったくっ、そういう可愛いことをっ……!」
「ひゃあんっ……!」
 達したばかりで力の入らない身体を、容赦なくキースが責め立てる。抜き差しされるペニスを追うようにイワンの内部が蠢いて、どこまでも貪欲に快感を求めた。乳首をこねられ、後ろから耳をかじられ、いちばん感じる場所を乱暴なぐらいに突かれて、身も世もなくイワンは啼いた。
「あ、あ、あ、キースさん、キースさんっ! 好き、大好き……!」
「イワン……イワン、愛しているよ、世界で誰よりも、きみが好きだ、愛している、イワンっ……!!」
「やっあ、あぁあ…だめ、だめだめぇ……! あ、イイ、きぃすさん、……おかしく、おかしくなっちゃうっ」
 ぐずぐずにとろけてうずくまり、腰だけを高く差し出した卑猥な姿勢で、イワンはひたすらに泣き叫ぶ。下半身から聞こえるぐちゅぐちゅといういやらしい水音、自分の口からひっきりなしに漏れる喘ぎ声、欲にまみれたキースの声で呼ばれる己の名。尖りきった胸の赤い飾りと、いつの間にかまた立ちあがっていた自身をこすりあげるキースの手。そしてはちきれんばかりに猛って、イワンの秘所を突き立てる、キースの大きなもの。耳が、心が、身体中が犯される感覚に、頭が沸騰する。
「あ、あ、あぁんっ! きもち、きもちいい、あ、もっとぉっ、キースさぁん、もっとしてぇ……!」
「っ……!」
 ぐい、と腕を引かれて、キースのものを呑みこんだまま、力の入らない身体をぐるりと反転させられる。向かい合う姿勢でキースの太腿に乗せられ、腰をぐっと引き寄せられれば、密着した腹部にペニスがこすれてまた涙をこぼした。
 貪るようなキスをしながら、キースが下から激しく揺さぶってくる。自重も加わっていっそう深く突かれる快感に、とうとうイワンの脳裏が真っ白にはじけた。
「あ、っやあぁ、だめぇ、ふぁ、キースさん、キースさん、すき、すきぃ……っ、あ、あ、ああああああぁぁ――――!」
「イワンっ……!」
 ほとんど射精感のないまま達したのと同時、キースの熱い迸りが己の深いところに放たれた、その喜びに全身を震わせながら、イワンは意識を手放した。

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