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暗い天井を映す視界と自分自身の荒い呼吸音に、夢を見ていたのだと知る。とうに見なくなったと思っていた、古い夢だ。全員でのデビューのかかっていた生放送のステージで、自分のパートの歌い出しを忘れ、立ち尽くした幼い私――。
落ち着こうと身を起こして、ふと、寮内の気配に耳を澄ませた。六弥さんの兄上であるノースメイアのセト・ランヴァルト殿下が手配してくれた新しい小鳥遊寮は、以前の寮よりずっと堅牢な造りだが、私たちは互いの気配を感じながら暮らすのに慣れきっていて、結局リビングのあるフロアにしつらえた私室はほどほどに壁の薄い作りになっている。別の階にはそれぞれが使える防音室も用意されたが、生活拠点はほぼ全員がリビングの近くに置いていた。部屋の並び順も以前と変わらず、私は廊下の一番端で、七瀬さんの部屋はその隣だ。
真夜中の寮はしんと静かで、みなぐっすりと寝静まっているようだった。この季節に聞こえてくることの多い七瀬さんの咳の音も、今年はほとんど耳にすることがない。センター交代で負荷を減らした効果が確実に出ているのだろう。ひそかに心配していたメンタル面も、いまのところ問題はなさそうだった。
七瀬さんが眠れずにいるのなら、それを理由に、彼の顔を見に行けるのに――だなんて、利己的にも程がある願望がよぎって、慌てて打ち消した。不安定なのは私のほうだ。馬鹿なことばかり考えてしまう。
重く痛むこめかみを押さえながら、苦々しさをかみしめる。万全とは言えないが、この程度の不調なら仕事のパフォーマンスが下がることはない。長年七瀬さんを支えてきたおかげで、調子が悪いなりの整え方にはすっかり詳しくなってしまった。ドラマで演じているのは葛藤を抱えた孤独な人物だから、多少のやつれであれば役作りのプラスにすらなるだろう。
そんな風に分析や対処のできてしまう自分のありようが、誇らしくもあり、同時に情けなくもあった。甘えて、頼って、支え合う。私たちはそれでいいはずなのに、私は未だに、支えられる自分をうまく許容できない。
そろりと立ち上がって、カーテンを開けた。薄ぼんやりとした夜空を見上げる。不夜城都市の片隅では、星明かりはまばらだ。
空に散らばる星々を、眩しくきらめかせるための、漆黒の空でありたい。美しい星空を見上げる人々の、感嘆のため息を、幸福感に満ちたさざめきを、私だけにゆるされた特等席から聞いていたい。
私の願いはいまも、そこから動けないままだ。
ため息をついて、カーテンを閉める。朝は遠いが、今日はもう眠れそうになかった。
読書でもしようかと書棚に伸ばした手が、ふと止まった。
「…………」
椅子を引いて腰を下ろしながら、抽斗から一冊のノートを取り出す。最初の数ページには、私らしくもない乱雑さで、とりとめもない言葉が並んでいた。紙を数枚めくってまっさらなページを開き、ペンケースからシャープペンシルを取り出す。カチカチと芯を出す動作は学生時代を思い出させて、私を少し落ち着かせてくれた。
デスクライトを灯して辞書を取り、いくつかの言葉を引いて、ノートの左上にひとつ書き入れる。
メテオ。
それは、空から落ちてくる星。
